この本読みました!宿野かほる「ルビンの壺が割れた」
最近、話題になっている本を読みました。ネットでの先行無料配信など出版社・新潮社の思い切った仕掛けが功を奏したのか発行部数は伸びに伸びているようです。本の帯には「この小説、凄すぎてコピーが書けません。編集者拝」という目を引くコピー。レッサーパンダもついつい手に取ってしまいました。156ページ、1時間ほどで読めますが、読み終わって久しぶりにがっかりでした。
「ネタバレ厳禁!!」らしいですが、ネタバレです。
この小説はフェイスブックによる、ひと組の男女のやり取りです。男性は52歳、女性は48歳で大学時代の演劇部の先輩と後輩です。二人は婚約して結婚式にこぎつけますが、式の当日、彼女は式場に現れず行方不明になります。その後、ネットで彼女の写真を見つけて、二人の間でフェイスブックでのやりとりが始まるというものです。初めは逃げ出したと思われた彼女に理由があって長い時間の後で、寄りが戻る・・・といった麗しい純愛小説かと思ったのですが、まるで肩透かし。読み進めるほどに、二人の背景や人格が分かるほどに、この小説の無茶苦茶な設定が浮き彫りになります。天才と賞され演劇界の宝として成功が約束されていた男性は幼女殺人犯に、美しく可憐な容姿で劇団を引っ張るはずだった女性は、高校時代から複数の男性と関係を持ち、大学生時代からアルバイトとしてソープランドで働き、今もお金のためにやめられない。フェイスブックのメールがやりとりされるごとに玉葱の皮を一枚ずつむくように二人の駄目人間ぶりが露わになります。最後は女性が男性の正体を暴露し暴言を吐いて終わります。「なにこれ?」というのが正直な感想です。
宣伝先行型。三流学生劇団の失敗作にお金を払った時のような気分です。
この小説のタイトル「ルビンの壺が割れた」は小説に登場する男性が作・演出を手掛けた劇の題名です。レッサーパンダが大学時代に見た三流劇団のお芝居に「死んでも、死んでも生き返る男の話」というのがありました。死んだはずの男が「実は俺は殺される前に逃げ出したんだ」と生き返る。また、殺されても「間一髪で生き返ったんだ!」と殺されても、殺されても何度も生き返る。最後には「俺は死なない体質だったんだぁ!」と『うそぶく』というお芝居でした。あまりのバカバカしさに、うんざりして劇場を出た記憶があります。この小説を読んで、この時の超いい加減な設定を思い出しました。「ルビンの壺が割れた」の評価は賛否両論あるようですが、レッサーパンダは受け入れられませんでした。宿野かほるという作家さんは筆力もあり文章もたいへん上手いのです。でも、もし出版社の企画に乗せられて小説を書いたり、売名の為の作品作りをしていたりするのなら、本当に才能の無駄使いだと思いました。
この本を読んでいない方には大変申し訳ない読書レビューになりました。改めてお詫びを申します。でも、正直者のレッサーパンダは、この本をお薦めできません。
次はもっとポジティブなレビューを書きますね。