この本読みました!今井信吾「宿題の絵日記帳」
レッサーパンダです。季節がすすみ朝夕は寒さを感じます。以前、「ほぼ日刊イトイ新聞(ほぼ日)」の京都店「TOBICHI(とびち)京都」に行った話を書きましたが、その同じビルにメリーゴーランド京都店という絵本専門店があります。今日はそのお店で偶然出会った本(絵本)のお話です。
画家のお父さんが高度難聴の娘さんのために描いた絵日記
主人公は幼稚園に通う女の子「麗(うらら)ちゃん」。生まれながらの難聴ですが、元気いっぱい、日々、新しい体験や成長を続けています。本書は麗ちゃんと幼稚園の先生が会話の練習をする補助として、(お父さん、お母さんに)宿題として出された毎日の絵日記です。画家のお父さんが描きためた4年分の麗ちゃんとお姉ちゃん(香月ちゃん)の日々の様子が生き生きとした絵と簡潔な文章で綴られています。
お父さんの優しいまなざしと素直に成長していく娘たちの姿は家族の歴史そのものです。
実は本文中にお父さんの詳しい話はあまり出てきません。何で収入を得ている人かとか、親戚や仕事の人間関係などについては全く無し。ひょっとするとお父さんはフリーター??と思わせるような描写や絵があちこちに。でも実はこのお父さん有名画家で、今では多摩美術大学の名誉教授までしている、とても偉い人なのです。そんな片鱗を少しも見せず、何の気負いもなく、唯々、障がいのある娘さんとの暮らしに正面から向き合う、1人のお父さんなのです。
世の中のお父さんに読んでほしいしい至宝の一冊です。
明るく元気な麗ちゃんの生活ぶりを描いた、からりと晴れ渡った青空の様な本なのですが、もらい泣きするページもありました。幼稚園を卒業したら普通校(小学校)に通うことになっている麗ちゃん。普通校に通うことに自信を無くし、いつまでも聾学校に通いたいと涙を流す姿を見て、お父さんも思わずもらい泣きし娘を抱きしめる。何とも切ない気持ちにさせられるシーンがあります。世の中の娘さんをもつお父さんに是非とも読んでほしいシーンです。
その後、成長した麗ちゃんはどうなっているのか?
普通、難聴の子供たちは手話を覚えて、自分の耳で聴くことから遠ざかってしまいます。しかし、耳の不自由な子供は、どんな音も全く聞こえないと思うことは健常者の大きな誤解です。「聴覚障がいはいろいろな程度や状態で、効くことに不自由であること」、「最適に調整された補聴器や人工内耳を使って教育を受け、生活をしていけば、どんな聴力の人でも聴くことができるようになります」、「耳に障害があっても、ことばの成長や人格が育つ道すじは、健聴児と全くおなじです」(本書、あとがき文より引用)。そんな訳で、麗ちゃんは今では結婚し三児の母となり、新進画家として活躍されているとのことです。ちょっと照れ臭い言い方ですが、やはり人間が一人前に育つには両親の深い愛情が必要なのだと改めて感じさせてくれる1冊でした。
今日は画家のお父さんが難聴の娘さんのために描いた「宿題の絵日記帳」という本の話でした。
宿題の絵日記帳
著者:今井信吾 編集:今井香月、今井麗
発売所:株式会社リトルモア