京都通なら知っておくべき!今でも買える伝説の「幽霊子育て飴」
京都は本当に不思議な街です。100年、150年前のことを昨日のように話すというのは本当の話。他所の人にはちょっと???ということが、わりあい普通にあります。そんな、話題の一つが、今日お話しする「幽霊子育て飴」の伝説です。京都の人たちは、このお話を昨日のことのように語ります。
六道の辻にある昔懐かしい飴屋「みなとや」さん
京都市の東山区松原に「六道の辻」(りくどうのつじ)という土地があります。「六道」とは、仏教の教義でいう地獄道(じごく)・餓鬼道(がき)・畜生道(ちくしょう)・修羅(阿修羅)道(しゅら)・人道(人間)・天道の六種の冥界をいい、人は因果応報(いんがおうほう)により、死後はこの六道を輪廻転生(りんねてんせい)する(生死を繰返しながら流転する)といいます。
この六道の分岐点で、いわゆるこの世とあの世の境(さかい)の辻が、古来より「六道の辻」であるといわれ、冥界への入口とも信じられてきました。実はこの辺りは大昔、身寄りがなく死んだ人の亡骸を捨てる(それも大量に捨てる)場所だったのです。六道の辻の言われは、そんなところにあるようです。(ちょっと怖い話なのです。)
今でも残るこの「六道の辻」のすぐ側に京都ではちょっと有名な飴屋さんがあります。「みなとや」さんと言います。レッサーパンダが、このお店をあえて「飴屋さん」と書くのは、本当に飴以外の菓子を売っていないからです。麦芽とザラメだけで作る昔懐かしい飴です。体に良くて自然な甘味の飴は、その優しい味も人気なのですが、実は「みなとや」さんを有名にしているのは京都人なら誰もが知っている、ひとつの伝説なのです。
京都では良く知られた話「幽霊になったお母さん」が毎夜、飴を買いに来る
「みなとや」さんで売られている「幽霊子育て飴」には語り継がれる由来があります。昔々、慶長4年(1599年)のお話です。毎夜飴を買いに来る女性がおりました。女性は毎夜1文銭を持って飴屋「みなとや」に飴を買いに来るのですが、7夜目の1文銭は「しきみの葉」(仏壇にお供えする植物の葉)と化します。不審に思った飴屋の主人が女性の後を追っていって、女性が姿を消したあたりを伺うとお寺の墓地が見えます。なんと、その墓地から赤ん坊の泣き声が聞こえるではありませんか。泣き声は数日前に亡くなった女性の墓の中から聞こえてきます。
慌てて掘り返すと元気な男の子があらわれました。これはきっと、亡くなった母が一人残した子供のために幽霊になって飴を買いに来ていたに違いない。救われた赤ん坊は大事に育てられ、後に出家して立本寺第二十世・霊鷲院日審上人となったとのことです。この話が京都中に広まり、誰言うともなく『幽霊子育て飴』と呼ばれ、その後、大そう売れたそうです。
唯一この店だけ、今でも営業を続ける老舗の飴屋さん
こんな伝説を持つ「みなとや」さんは今でも「幽霊子育て飴」を売り続けています。今回、たまたまお店の方にお話を聞く機会にめぐまれました。
この天然麦芽を使った飴、現在、京都ではもう「みなとや」さんしか作っていないそうです。以前は桂にあった「桂屋さん」(桂飴本家 養老亭)が同じような製法の飴をつくっておられたそうですが、後継者がいなくて3年前に店をたたまれたそうです。また、テレビアニメでリバイバルされている水木しげるの「ゲゲゲの鬼太郎」。その原作となる「墓場の鬼太郎」の中の鬼太郎誕生のエピソードは「みなとや」さんの伝説がモチーフになっているそうです。
「幽霊子育て飴」は冷やし飴にしても美味しいらしい
そんなとり止めのないお話をしていると、高齢のご夫妻が来店されました。以前から「幽霊子育て飴」のファンで東京からわざわざ、この飴を買いにこられたそうです。そうこうする内に、今度は修学旅行生とおぼしき学生のグループが二組来店です。
平日の午後にも関わらず「みなとや」さんは結構賑わっています。店も混んできたので、そろそろ失礼しようかと思ったところ「夏は冷やし飴にすると美味しいですよ。」と教えて頂きました。3袋も買ったことですし、近いうちに試してみたいと思います。
怪談噺というと、ちょっと怖くて後味の悪いエピソードが多いのですが、「幽霊子育て飴」のお話は母の優しさや愛情を今に伝え、多くの人々の共感を得ているようです。その証拠に、この伝説と同じようなお話が、鎌倉、島根、福岡など全国のあちこちにあるのです。梅雨空が続き、寝苦しい夜には、ちょっと「幽霊子育て飴」のお話を思いだしてみてください。それでは、またね。
みなとや 幽霊子育飴本舗
住所:京都市東山区松原通大和大路東入ル
電話:075-561-0321
交通:京阪本線「清水五条駅」5番出口から徒歩10分
営業時間と定休日:10:00~16:00
定休日は月曜日
※「幽霊子育て飴」は1袋500円税金別、宇治茶の販売もやっています。
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