宇治茶を召し上がれ。辻利兵衛本店で絶品パフェを食べながら宇治茶の歴史を想う。
レッサーパンダです。レッサーパンダが京都府宇治市に住んでいることは以前ブログに書きましたね。今日は地元の話題です。JR宇治駅から歩いて5分、住宅街の中に、昨年、とても素敵なお店がオープンしました。宇治茶を堪能できる優雅で趣のあるカフェです。
「宇治茶」振興の立役者「辻 利兵衛」のお店
京都の「つじり」というと最近すっかり「お茶」の代名詞となりましたが、実は「つじり」には色々あって「祇園辻利」、「津路利」、「辻利一本店」、「辻利兵衛本店」などなど。どれにも「つじり」がついているのですが、全く別のお店や別会社だそうです。そんな中で、辻利兵衛本店は現在の宇治茶の振興に道を開いた宗家にあたる位置づけです。
宇治茶は鎌倉時代に始まったと言われています。地元の数人の大庄屋が広域な茶園を支配、管理していたため統制がとれ産業として振興しました。その後、千利休の登場や戦国武将の後押しで隆盛の極みを迎えました。しかし、江戸幕府の衰退とともに諸藩のお茶に対する関心が薄れ宇治茶の衰退がはじまります。江戸時代の終わり頃には古の風情は見る影もなかったようです。そんな中、辻利兵衛本店の初代・辻仙介(青年期に利兵衛、晩年に利右衛門と改名)が登場します。彼は失われつつある茶畑の風景を惜しみ、若干・十七歳で茶畑を買い取りだします。(今でいう青年実業家でしょうか。)そんな中、彼は「お茶」にとって画期的な発明を生み出します。これまでお茶は茶壺に入れて保存、輸送することが伝統的なスタイルでした。それを木箱の内側にブリキを貼った「茶櫃(ちゃびつ)」に入れることを考案し流通に使いだしたのです。これは画期的な方法で「鮮度を損なわず」、「安全性に破損することなく」遠方にお茶を運ぶことのできる技術でした。(上手に密封しないと湿気を寄せて、落ちれば割れる茶壺からは飛躍的な進歩です。)
明治新政府は海外との交易を積極的に行うにあたり「お茶」を日本の特産品として積極的に輸出を始めました。これは辻仙介の大きな功労です。また、仙介は、これまで丸まった球状で出荷されていた玉露の茶葉を針のように細長く、かつ瑞々しく仕上げる製法を考案しました。これが今日でも受継がれている「玉露製法」なのです。この玉露製法のおかげで宇治茶は全国で知らない人がいない有名ブランドの地位を手に入れたのです。辻仙介はいわば「窮地に陥った宇治茶を救った人物」として、いまだに語り継がれる人物なのです。
辻利兵衛本店がプライドをかけて作ったお茶の専門カフェ
前置きが長くなりましたが、このカフェは元々、辻利兵衛本店が長らく使用していた工場がそのままリノベーションされて出来たお店です。昨今のお茶ブームにより玉石混交の中で「本物を味わってほしい」という店主の思いが形になったものです。「つじり」は様々ないきさつで沢山できたものの『笠に「り」』、『介』の屋号(マーク)を受継いでいるのは自分たちだけだというプライドを感じます。華美に奢ることなく伝統の上にさらに伝統を打ち立てるべく精進していく決心覚悟が、お店のありようにも現れている様に思われました。
これは方針なのでしょうか、このお店、過剰な宣伝をすることもなく、場所も非常に分かりにくい所にあります。(恥ずかしながら地元民のレッサーパンダがGoogleのお世話になりました。)それでも、わざわざ足を運ぶ人が後を絶ちません。あまり騒がしくなってしまうことは本意ではありませんが、本物を味わいたい方は、ぜひ一度足を運んでみてください。
今日は、宇治の名店・辻利兵衛本店が営む上質なカフェのお話でした。それでは、また。
辻利兵衛本店 京都宇治本店
住所:〒611-0021 京都府宇治市宇治若森41
TEL:0774-29-9021
営業時間:10:00~18:00(ラストオーダー17:00)
定休日:火曜日