世界中から集めた葛飾北斎の作品なんと200点以上!肉筆画の迫力に圧倒された宵
誰もが一度は目にしたことがある葛飾北斎の浮世絵。世界的に人気があり主要な作品の多くはイギリスやアメリカを中心とした海外の美術館が所蔵しています。その作品がなんと200点もそろう展覧会「北斎-富士を超えて-」が、今、大阪・あべのハルカス美術館で開催されています。10月6日から開催されていたのですが、ここのところ本当に公私ともに忙しくて時間がとれていませんでした。一昨夜、やっと念願かなって見に行きましたので、その感想を少し書きたいと思います。
葛飾北斎の晩年30年に焦点をあてた国際共同プロジェクト
北斎の作品は海外に流出することが多く、国内の美術館だけでは企画が成立しませんでした。今回の展覧会はイギリスの大英博物館の全面的な協力で実現しました。イギリスでも本展覧会は開催されており、開催期間は連日行列ができる大盛況ぶりだったようです。ご想像のとおりレッサーパンダが訪れた日も平日の午後6時半をまわっていましたが多くの見学者がつめかけておりました。
肉筆画の繊細さ、彩色に現れる卓越した感性!神の領域を目の当たりにする!!
今回の展覧会に驚かされたのは展示の方法です。普通「国際的文化遺産レベルの作品」は観客が触れる距離で見ることができるなんてまずありえません。あべのハルカス美術館は、どちらからというと本格的な美術館というよりイベント会場的な色合いが強いせいか、かなり自由で寛容です。悪く言うと「警備がゆるい」わけです。そのおかげで目の前で北斎の息遣いを感じるような筆使いや鮮明な色合を堪能することができました。
北斎は90歳で亡くなったのですが、死の直前まで絵に対する情熱を失わず、最後までその人生を駆け抜けたことが晩年の作品の一つ一つに良く現れています。余談ですが、晩年の北斎は自分を『富士山』と同一化し高みをめざしました。また、最晩年の88歳から90歳までの北斎は肉筆画に漢字『百』の印を入れており100歳を超えても描き続け、画聖としての域を極めるという意欲に満ちていたようです。(それまでは有名な「卍」一文字を入れていました。)
今回、一番見たかったのは北斎の娘・お栄(葛飾応為=かつしか・おうい)の作品
北斎には三人の娘がおり、その三女にあたる応為はお栄と呼ばれ可愛がられていました。ただ可愛い娘ではなく、晩年の北斎作品の完成に尽力し、画才にも恵まれた人物だったようです。北斎は「美人を描かせたら、儂より上だ。」と周りにそう話していたそうです。ちなみに「おうい」という雅号は北斎がお栄のことを「おぅ~い、おぅ~い!」と呼んだことによると聞いたことがあります。真偽のほどはわかりません(笑い)。今回のレッサーパンダがお目当てにしていた、お栄さんの作品『吉原格子先之図』は既に浮世絵のレベルを遥かに超えており、陰影の技法などは近代・現代の洋画の様です。しばし見とれました。実はレッサーパンダは北斎よりも、これが見たくて足を運んだのでした。
人生の高みを目指し続ける人は、生涯「青春」真っ只中!
今回の展覧会は作品自体も素晴らしいのですが、国際共同ブロジェクトというだけあって会場構成に光るものがありました。各コーナーにそれぞれテーマとエピソードがあり、北斎が晩年の30年に何を考え仕事を続けたのかが分かった様な気がしました。(上手に示唆されています。)体が動かなくなり、眼もよく見えなくなる88歳。それでも這いつくばるように作品を作り続けた情熱には、ある意味、執念を感じます。でも、そこにあるのはドロドロしたものではなく、高齢になっても素敵なものや美しいものを喜々として絵に残しつづける無邪気な北斎。画法や仕掛けをワクワクしながら一日中楽しそうに弟子たちに語る北斎の姿です。それは、まるで青春時代を謳歌する若者のようです。レッサーパンダも願わくは、こんな老人になりたいものです。今回の北斎展、本当に良い展覧会なのでお薦めです。残念ながら会期の終了は11月19日(日)ですから、ご興味のある方は是非お早めに。
今日は大阪市阿倍野区で開催されている展覧会「北斎-富士を超えて-」のお話でした。
大英博物館 国際共同プロジェクト 展覧会「北斎-富士を超えて-」
会 場:あべのハルカス美術館
近鉄「大阪阿部野橋駅」、JR・地下鉄「天王寺駅」、阪堺上町線「天王寺駅前駅」下車すぐ。
会 期:10月6日(金)~11月9日(日)
平日・午前10時から午後8時 月・土・日・祝・午前10時から午後6時
料 金:一般1,500円、大学・高校生1,000円、中学・小学生500円