この本読みました!志賀 貢の『三途の川の七不思議』
今回ご紹介する本は本当に表紙買いなのです。「三途の川の七不思議」というタイトルの本です。「三途の川」=「あの世とこの世の境」=「何か気になる」という訳で、書店の店頭で衝動的に手に取ってしまいました。三途の川のお話ということ、オカルト的な話題かと思われそうですが、そうではなくて臨床医が自分の診療体験を基に「人の末期」について語った本なのです。
現役医師が語る生と死のはざまに存在する「三途の川」
この本の解説によると「三途の川」という概念は平安時代には既に存在していたとのことです。約1200年以上前に「三途の川」、「地獄と極楽」、「賽の河原」などが文書で残されており、日本人の意識の根底に今も脈々と受け継がれています。レッサーパンダが何気にこの本に手が伸びたのも、そのせいかも知れません。この本の作者・志賀貢氏は臨床医を50年続けており未だに現役医師だそうです。今日まで何千人という患者さんの死に立ち会う中で「人が三途の川を渡ろうとする時の様々な兆候」を目の当たりにされています。例えば、「お小水が出なくなる」、「意識障害が出る」、「チアノーゼが起こる」、「敗血症が起こり40度以上の高熱がでる」、「不整脈が現れ心臓衰弱が起こる」などなど枚挙にいとまがありません。その様な臨床の現場での体験から「なぜ日本人が死と三途の川を結びつけるのか」を客観的に考察しているのが本書なのです。
万国共通!?三途の川の手前に広がるお花畑
ところで、古くからの伝説や、臨死体験を経験した方の言葉から推測すると「三途の川の手前には美しいお花畑」が存在するようです。このお花畑のお話は日本人だけでなく万国共通だそうです。どこの国でも「お花畑が見えた」という臨死体験を語る方がいて、どのお話にも「様々な種類の花が見えた。花には全て綺麗な色がついていた。」と口をそろえて同じことを証言しているそうです。色の着いた夢を見る人も時々いて、これも世界共通だそうです。この本の作者は臨死体験による「お花畑現象」は人間の脳が同じ構造を持っていることの証明ではないかと書いています。また、肉体的に厳しい「生の終わり」に臨む際の人類共通の「心の癒しのシステム」ではないかと推察しています。
レッサーパンダも見た「お花畑」の不思議体験
実はレッサーパンダも不思議な経験をしています。もう19年も前になりますが、頸椎損傷で手術をしました(何故そうなったか、どのくらいひどかったかのお話は長くなるので端折ります)。長い手術で8時間ほどかかったようです。長い手術が終わり、麻酔が醒めだして何となく集中治療室にいるのはわかりました。ただ、集中治療室なのに周辺がとてもうるさいのです。周りには複数の人がいて、会話を聞いていると何かの順番待ちをしているようです。話をしている人はというと「不自然な笑顔を顔に張り付け黒いコートを着た背の高い初老の男性」、「黒い和服を着たかなり高齢の痩せた女性」、また、これも「黒いセーラー服を着てうつむき加減の中学生ぐらいの女の子」、あと「大学生ぐらいの黒いジャケットを着た男性」他にも何人か人がいたように思います。不思議なことにみんな黒い服をきています。会話が少しずつ鮮明になってくると、こんな事を言っているのがわかります。「今回は私の番よ!」、「いや、順番を待っていたのは私の方が長い!」、「私はどうしても帰りたいのよ!」、「私に入らせて!」声がだんだんはっきりして、増々やかましくなります。どうやら、この人たちが自分の体を狙っていることが分かりゾッとしました。思わず「うるさい!!うるさい!!みんなどこかに行け!これは僕のものだ!!」と手術後すぐでしたが、どこからこんな声を出るのか思うぐらい怒鳴りました。すると不思議なことに彼らはすぅ~と、遠のいていきます。その後ろに綺麗なお花畑が一瞬見えたのですが、何だか見てはいけないものを見た気がして増々ゾッとしました。あれはいったい何だったのでしょう。今も記憶に鮮明に残っています。
気がつくと集中治療室の天井が見え、何人かの看護師の女性が側にいました。とても喉が渇いたので水を飲ませてほしいと訴えたのですが、水は飲ませてもらえず、その代わりにガーゼに包んだ氷を口に含ませてくれました。思わず心の底から「ありがとう」という言葉がわいてきました。看護師の人たちは「氷のお礼」だと思ったようですが、レッサーパンダの気持ちは「連れ戻してくれてありがとう」だったのです。
自分自身の末期にいついて考えさせられる本
話が脱線してしまいましたが、人間は必ず死にます。私も死にますし、親や兄弟、妻やいずれは子供も死んでいくことに変わりはありません。そんな避けられない死と向き合わなければならない時に、この本は役に立ちそうです。親しい人が亡くなるときに、どの様な現象が起こり、医師はどのように見立てるのかといいったことが、かなりリアルに描かれています。(交通事故や突然死は別として)何よりも死んでいく本人がどう死を受け入れるべきか、お手本になりそうです。この本には前作があって「臨終の七不思議」「臨終、ここだけの話」という2冊が巻末で紹介されていました。前作も読んでみたくなる引力のある1冊でした。ただ、残念なのは本書の最後が何となく尻切れトンボのような感じでフェイドアウトしてしまっているところ。読者としてはもっと力強い結論付けを期待していたのですが・・・。そこが丁寧に書かれていれば100点なのに残念です。今日は現役臨床医が人の末期について語った本「三途の川の七不思議」についてのお話でした。それでは、またね。
「三途の川の七不思議」
作:志賀 貢(しが・みつぐ)
発行元:株式会社三五館 定価¥1,200(税別)