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2018-05-15

バウハウスの愛弟子たち「オットー・ネーベル展」のナイトミュージアムは最高!!

今日のお話は少しマニアックなお話です。美術史、近代抽象画などにあまり興味のない方には少々退屈なお話になるかもしれません。実は4月の上旬にウィリアム・ターナー展で初めてナイトミュージアムを経験しました。それがとても良かったので、今回、またまたナイトミュージアムに参加してきました。

ネーベルの代名詞になっている格子とグラデーションのデザイン。チラシにも使われています。

ネーベルの代名詞になっている格子とグラデーションのデザイン。チラシにも使われています。

今年2度目のナイトミュージアム「オットー・ネーベル展」に参加

今回も会場は京都文化博物館、ドイツの抽象画家オットー・ネーベルの日本初の回顧展です。シャガールやカンディンスキー、クレーなどの同時代人で、影響を与え合っていた人物です。

会場の京都文化博物館には100名の美術ファンが集まりました。圧倒的に女子が多い。

会場の京都文化博物館には100名の美術ファンが集まりました。圧倒的に女子が多い。

今回のナイトミュージアムではナカムラクニオ氏という美術研究家のコーディネートでオットー・ネーベルを取巻く歴史的背景や画家たちの人物相関が丁寧に説明されました。(氏は「6次元」というブックカフェのオーナーで、「なんでも鑑定団」というTV番組のディレクターも勤められていたとか)なかでも「バウハウス」に於ける芸術家たちの位置づけや各々の美術史における役割などの解説が本当に良く解かる抜群のギャラリートークでした。

今回は日本ではじめてのオットー・ネーベルの回顧展ということもあり期待が膨らみます。

今回は日本ではじめてのオットー・ネーベルの回顧展ということもあり期待が膨らみます。

「バウハウスの愛弟子たち」の仕事に触れる

今回の展覧会でキーワードになっているのが『バウハウス』です。バウハウスは1919年にドイツで創設された美術学校です。もともとは建築学校で工芸・写真・デザインなどを含む美術と建築に関する総合的な教育を行っていました。初代校長はドイツのモダニズム建築家・ヴィルター・グロピウスであったことからドイツにおけるモダニズムを目指す建築家や芸術家の登竜門のような位置づけになっていたのです。バウハウスは多くの有名芸術家を輩出するのですが、その活動期間はわずか14年。第二次世界大戦下ナチスの迫害によりバウハウスで切磋琢磨した多くのアーティストたちはドイツからアメリカやスイスへ亡命します。その事が近代モダニズムの世界的な潮流を作り上げました。今回の展覧会ではワシリー・カンディンスキー、パウル・クレー、マルク・シャガールなどネーベルの朋友でありバウハウスと関わりの深い作家たちの作品も展示されており、ネーベルの画法にどのような影響を与えたのか、その過程を追うことができます。

ナカムラクニオ氏の手書き「バウハウス人物相関図」。実は2ページ目もあり、それには日本の「民芸運動」に与えた影響などが細かく記載されています。とても解り易い、貴重な資料です。

ナカムラクニオ氏の手書き「バウハウス人物相関図」。実は2ページ目もあり、それには日本の「民芸運動」に与えた影響などが細かく記載されています。とても解り易い、貴重な資料です。

色彩の画家「オットー・ネーベル」についてあらためて学ぶ

今回のナイトミュージアムの解説では知らなかった事を色々と教えてもらえました。例えば彼の最初の職業は「煉瓦職人」で、その事が緻密な点描の技法や微妙な色彩表現に反映されているとか、画家で食べていけなかった頃には俳優として舞台に立っており、現在でもドイツの一部の地方では俳優としての名前が画家以上に通っているとか、詩人としての才能にも恵まれており、晩年まで自作の詩の朗読会を行っていたなどなど・・・。お話を聞いていて思いました。オットー・ネーベルの緻密な作品の背景には、様々な人生経験や才能の成熟の過程のようなものが包含されており、その事が作品に奥行きと不思議な陰影を生んでいるのでしょうね。

驚いたことに一部の作品(本物です)は写真撮影がOK!オットー・ネーベル財団のご厚意だそうです。

驚いたことに一部の作品(本物です)は写真撮影がOK!オットー・ネーベル財団のご厚意だそうです。

「パウル・クレー」と「オットー・ネーベル」について兼ねてから考えていたこと

以前からオットー・ネーベルについて考えていたことがあります。レッサーパンダはパウル・クレーが頻繁に用いた版画技法・油彩転写に興味があります。(画用紙に黒い油絵具を塗り、裏面から擦って画像を転写する版画の一種)。ネーベルは同時代人のパウル・クレーのことをかなり意識していたようなのですが、クレーの技法「油彩転写」をなぜか取入れていません。

人が少ないということが、どれほどストレスを軽減するかナイトミュージアムに参加すると実感できます。

人が少ないということが、どれほどストレスを軽減するかナイトミュージアムに参加すると実感できます。

それが今回のナイトミュージアムの解説を聴いて閃きました。ネーベルはクレーの作風に惹かれていたようです。しかしながら煉瓦積み職人のような気質と技法(緻密な計画と根気強い作風)を持つネーベルには、クレーのような「偶然をそのまま作品に反映するような技」(油彩転写のような計画づくだけでは成立しない技法)が性に合わなかったのではないかと思い至りました。ナカムラクニオ氏のネーベルの人物像の解説を聴いてなんとなくひとりで納得してしまいました。

近づいて見ると、たいへん細かで緻密は点描であることが見て取れます。「職人的」と言われる意味が大変よくわかります。

近づいて見ると、たいへん細かで緻密は点描であることが見て取れます。「職人的」と言われる意味が大変よくわかります。

また行きたい!じっくり貸切&おしゃべり鑑賞会

今回のナイトミュージアムは前回の「ターナー展」以上に充実していました。ギャラリートークがとても楽しかったのです。軽妙なおしゃべりから「作品に対する目の付けどころ」を的確に教えていただけました。また、少ない来場人数での貸切見学は講師とのコミュニケーションがとり易いというメリットもあります。気楽に質問できる空気感がありました。

解説付きで一度見て、自分のペースでもう一回りできるのもナイトミュージアムの魅力です。

解説付きで一度見て、自分のペースでもう一回りできるのもナイトミュージアムの魅力です。

本当に2時間があっという間でした。これで通常料金プラス300円は本当にお得です。今後も、ナイトミュージアムのチャンスがあれば是非とも参加したいと思います。

今日は現在、京都文化博物館で開催されているオットー・ネーベル展のナイトミュージアムのお話でした。それでは、また。

 

ナイトミュージアム「じっくり貸切&おしゃべり鑑賞会」について

料金:通常料金1,500→ナイトミュージアム1,800円(税別)でした。

(オリジナルの資料がついてこの価格は本当にお値打ちです。)

オットー・ネーベル展

会場:京都文化博物館

会期:4月28日(土)~6月24日(日)

時間:18:30~20:30

〒604-8183京都市中京区三条高倉

電話:075-222-0888

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