残念!「お話を絵にするコンクール」子供の気持ちをもっとわかってほしい!!
こんにちは、レッサーパンダです。長年同じことを繰り返していると、どんなに「素晴らしい事」や周りに「高く評価されている行い」でもマンネリ化してしまうものです。個人もそうなのですが、組織や企業がやっていると担当者がかわり「前任者がこうしていたのだから、これでいいや。」となりがちです。冒険をしなくなり、徐々に陳腐化してしまいます。先日、そんな場面に出くわしましたので、今日はそのお話を書きたいと思います。
イオンモールで行われた美術展。偶然通りかかって驚いた!
1週間ほど前になりますが、京都イオンモール(京都駅の八条口からすぐ)に用があって出かけえました。
正面玄関に1枚の立て看板がかかっており、そのタイトルは「お話を絵にするコンクール」。面白そうなので早々に用事を済ませて覗いてみることにしました。場所はモールのほぼ中央にある吹抜けのアトリウムです。
その1階になんだか白い壁にかこまれた違和感のある「囲い込みスペース」がありました。よくみるとポスターが貼られていて「お話を絵にするコンクール」の展示会場なのだとわかります。それにしても、周りは目だった飾り付けもありません。アトリウムの1階にあるにも関わらず近づく人も少なく、それが一層の違和感を生んでいます。ちょっと驚いてしまいました。
入場無料は良いけれど、とても入りにくく見学しにくい会場
会場は高さ2m40cmほどの白っぽい壁に画用紙に描いた子供たちの絵画作品が直接貼られています。この企画、出版社と行政がタイアップし京都新聞社が音頭をとって開催している企画です。課題図書を読んで読書感想文の代わりに感じたことを絵に描いて出品するのです。
会場のお話にもどると入口は会場の正面に2カ所、その内の1カ所に管理者として女性が1名立っていました。仮設の壁の両面に作品が貼られているのですが、通路幅が1mほどしかなく(人が立った時の必要スペースを45cmとしても)絵との距離は60cm程度です。絵は上下3段に貼られているので極めて見づらい状況です。
会場自体も(何せアトリウムの広場は140㎡なので)お世辞にも広いとは言えません。そんな状況で入賞・入選作品1040点ほどを展示しようというのですから、どう考えても無理があります。(以前ブログにも書いた「上野の森美術館・日本の自然を描く展」では兵庫県立美術館・原田の森ギャラリーの本館2階の1300㎡に2000展でした。)極端な閉塞感を感じてしまいます。
いったい誰に向かって展示をしているのだろう!?
たとえ会場が狭くても、子供たちが自由に描く作品はどれも元気で迫力があります。レッサーパンダは課題図書の一部しかしりませんでしたが、それでも本を読んだ感激や驚き、目の前に浮かぶ状況が伝わってきます。
絵に見とれていると、先ほどの管理者の女性が、ある家族連れと何だかもめている様子です。聞くともなく話を聞いていると家族連れの娘さんが今回のコンクールで「佳作」に入ったらしいのですが、「佳作」はここでの展示がされないらしいのです。その事に関してのお知らせがなく(佳作通知の際にお知らせがなく)コンクールの展示案内だけが届いたようです。わざわざイオンモールまで足を運びながら展示がなかった家族連れの落胆した後姿が痛々しい限りでした。(確かに、募集要項に佳作は展示されないという一文はあるのですが、かわいそうでした。)
会場の一角には後援団体の一覧が掲出されています。想像するに、教育委員会はこのような「事業を行っていること」に意味を見出し、出版社は出版不況に対しての歯止めのために(ほとんど、こんな事では歯止めにならず、単に5000冊の本が売れただけ)、新聞社は両者を取り持って、わずかばかりの広告費と社会貢献という体裁をみつくろう。イオンは経費をかけずに集客を期待する。「三方良し」の企画に見えますが、いったい誰の為の企画でしょうか?この企画の主体は子供たちです。先の『佳作は展示しない』ではありませんが、このコンクール、本当に子供たちのためになっているのか少々疑わしい気がします。
レッサーパンダならどう企画するか考えてみた
今回、展覧会を見ていて、ふと「自分が主催するならどうするだろう」と考えました。
まず、出品者全員の作品を展示したい。その為には広い会場の確保と資金集めが必要です。レッサーパンダは入場料を無料にする必要は無いと思います。他のコンクールやコンテストでは入場料をとっていることも多々あります。その方が「日曜日で入場無料なのに会場が閑散としている」などということが起こらないのではないでしょうか。また、名前だけの「後援」はNG。京都府や滋賀県などの行政はもちろん、名前貸しだけのよくわからない団体(美術教育研究会、美術教育連合、児童文化研究所、芸術文化財団などなど)からもしっかり募金を集める。その替わり参加者、見学者が沢山集まれば、そこで出版社や団体の活動や取り組みをアピールできる場所と時間を提供しお金を出すメリットを感じてもらえばよいでしょう。(物を売ってもいいと思います。)また、巡回展は極力少なくする。例えば、京都、滋賀で各1ヵ所ぐらいにする(今回のコンクールでは巡回展が7回も開催されます。イオンモールでも、あの枯れ様ですから、地方の会場に人が集まっているのか心配ですね。)。また、せっかく広い会場が確保できたのならば、関係者が有名作家やアーティストを招いてのワークショップを開催してはどうでしょうか?少額ならばもちろん参加費も取って良いのではないでしょうか?あと、細かい事だけれど作品は課題図書ごとに集め、課題図書の概略をしっかり説明するコーナーも(場合によっては造形のオブジェを作って課題図書を知らない人にも興味を持ってもらうことが)必須ですね。
我が子や家族の絵がちゃんと展示され、内容に納得の行くイベントを開催すれば、両親や祖父母は子供、孫を連れて遠方からもきっとやって来るはずです。ようは『足を運ぶだけの値打があるかどうか』なのだと思います。
48年間もこんな企画を続けていては子供がかわいそう・・・子供が主役の斬新な企画に期待します
あと気になったのは図書選定委員や作品二次審査員に教育委員会の人の名前ばかりが並んでいたことです。図書のコンクール、絵のコンクールならば現役の作家やアーティスト、芸術家の名前が一人や二人入っていてもいいのでは!?
このコンクールの主催者挨拶に開催目的として「国語および美術教育の両分野で読書力、表現力、想像力を培うこと」と書かれていましたが、レッサーパンダは疑わしいと感じています。どうも、大人たちの思惑が先行して、各参加校への忖度や(個人より学校単位の団体参加がほとんです)、お金を出さす他人の褌で相撲を取ろうとする教育委員会の身勝手さが見てとれます。
夏休みの貴重な時間を使って作品を描き上げた(中には泣きながらイヤイヤ描いた子もいるかもしれません)13万1,212人の子供たちのために本当になっているのでしょうか?確かに、この企画が始まった48年前には斬新な行事だったのかも知れませんが、何だかひどく形骸化しているように感じます。思い切って、この企画の有りようを考え直してもいいのではないでしょうか?子供たちが本当にやりたいことや、成長につながる何か。今の時代に則した教育企画の開催です。たとえ「子供デジタルアート展」(映像でもCGでも絵画や文章作品でもOK)とかね。歴史のある企画ですが、「止める勇気」もそろそろ必要なのでは?・・・と考えながら会場を後にしました。
今日はイオンモール京都で見た「お話を絵にするコンクール」のお話でした。それでは、またね。
お話を絵にするコンクール
この企画、残念ながらイオンモール京都での巡回展は1月20日で終了しました。しかしながら、2月18日まで京都府下、滋賀県下の会場で場所を変えて巡回展が開催される予定です。ご興味のある方は
をご覧ください。
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