急がない人生の見つけ方!ソール・ライターの写真に学ぶ
レッサーパンダです。よく人から「忙しいのによくそんなことをしている時間がありますね。」と言われます。どうやら「毎日をせっかちに過ごしている人」という印象を周りに与えているようです。それは自分自身も感じていて「忙しい!忙しい!!」が口癖になっている自分がつくづく嫌になる時があります。
朝、NHK「日曜美術館」を見ていると良いものに出会えます
毎週、日曜日の朝にNHKで放送されている「日曜美術館」という番組をご存じですか?かなり昔からある美術関連の教養番組です。美術評論家や俳優、作家などの著名人をゲストに迎えて有名芸術家について語る番組です。日曜の朝の番組としては少々地味ですが、芸術家たちの知らない一面を専門家が語ってくれたり、現代のアートシーンを知る手ほどきをしてくれたりします。
2月9日の番組で「ソール・ライター」という写真家の特集を放送していました。
写真家 ソール・ライターってどんな人??
ソール・ライターはアメリカの写真家です。この名前を聞いて「あれ、この名前聞き覚えがあるぞ」と思われた人もいるのではないでしょうか。最近、インスタグラムで『#ソール・ライター風』、『#ソール・ライター度最高』、『ソール・ライターを探して』などというハッシュタグで投稿する若者が増えているのです。実はソール・ライターの作品を真似た写真が大人気なのです。ソール・ライターは1923年生まれ、2013年89歳で天寿を全うするまでニューヨークのイーストビレッジに住み続けました。その周辺で撮影した「日常風景の写真」が近年脚光を浴び没後に一大ブームとなっています。
よくソール・ライターを評して「典型的な大器晩成型だね。」という人がいますが、それは間違いで、1940年代~1950年代にかけて活躍したコマーシャルフォトの先駆者なのです。彼の作品はShow、ELLE、英国版ヴォーグ、Queen、Novaなどの雑誌に掲載されており、時代の最先端を駆け抜けた人物なのです。特にその時代、やっと普及をはじめたカラーフィルムでの撮影のオーソリティーでもありました。(ひと昔前のロバート・キャパなんかは完全にモノクロの世界ですね。:パリマグナム写真展参照)
当時、ファッション写真家として名声を手にしていたライターですが、その仕事や仕事に関わる人たちに対して、かなりうんざりしていたようです。
「かつて『Harper’s Bazaar(世界初のファッション誌)』での1年より
ボナールの1枚のデッサンの方が、私にとっては意味がる。と雑誌編集者に行ったことがある。
彼女の表情は凍りつき、完全に軽蔑の眼差しで私を見つめていた。」
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「雨粒に包まれた窓の方が私にとっては有名人の写真より面白い。」
こんな言葉を残しています。
「名声やお金に縛られた人生」を捨てる勇気
ライターはファッション業界で名を馳せますが、数年で業界から足を洗ってしまいます。その後、マンハッタン東10丁目に居を移し、亡くなる2013年までそこに住み続けます。彼の作品作りのフィールドはニューヨーク、それも生活の場である住居周辺数ブロックの街の中です。当時、お世辞にも上品とは言えないロウアー・イーストサイド、移民が多く貧しい街(現在は高級住宅街ですが)。その日常風景がライターの制作のステージでした。
「写真を見る人への写真家からの贈り物は、日常で見逃されている美を時々提示することだ。」
彼の言葉です。
ライターはその後の約50年を街の風景や人々の暮らしを撮影することに費やします。「一流写真家として大々的な個展を開催するぞ!」とか「芸術写真を目指して新しいシーンをけん引するのだ!!」なんてことは一切思わず、自分の感性をたよりに好きなものを好きなように撮り続けた人生でした。昨今、彼にスポットライトを当てた人たちはライターの飾らない人柄、美しい物を愛してやまないピュアな気持ちに共感したのだと思います。ライター再発見は偶然ではなく、現代の「忙しくて」、「自分本位な生き方」、「前のめりな主張ばかりで自分の足元を見ない人生」に悲観的な人たちの求めに応じたようなライターブームの再燃です。
お金や名誉に執着しない人生、美しい物を素敵だと素直に言える生き方、それを教えてくれるライターの作品が素晴らしいのです。
改めて3年前に買った本を見ていて気付いたこと
NHKのテレビ番組きっかけで、またソール・ライターのことが気になりだし、3年前に買った写真集を引っ張り出しました。改めて、彼の作品の一つ一つを見ていると、いかに彼が日常を愛し、丁寧に人生を生きたかということが伝わってきます。
実は、とある友人が出張先で撮影したロンドンやパリの写真を題材に絵を描いていました。それが羨ましくて仕方ありませんでした。「自分が良い作品を描けないのは周りに良い題材がないからだ・・・」と自分自身に勝手な言い訳をしていた時期がありました。
「私が写真を撮るのは自宅の周辺だ。神秘的なことは馴染み深い場所で起きると思っている。なにも、世界の裏側まで行く必要はないんだ。」
久しぶりにライターの写真集に添えられた彼の言葉を目にして、恥ずかしくて顔が赤くなりました。
また、一眼レフで写真が撮りたくなりました
以前、ロック歌手の佐野元春が「誰かが君のドアを叩いている」という曲の中で『街角から街角に神がいる』と歌っていました。
どうやら芸術の神は僕らの暮らす街の日常の中に宿っているようです。最近はスマホのカメラが良くなってインスタグラムやツイッターの写真もスマホだよりです。
ソール・ライターの写真集を見ていると、また一眼レフのカメラを持って街をぶらぶら歩いてみたくなりました。
ソール・ライターの作品を見た後に、一眼レフを持って街を歩くと、芸術の神とバッタリ出逢えそうな気がします。もし偶然、街角で出逢えたら、しっかり写真に写してブログやインスタでご報告したいと思います(笑)。
今日はニューヨークが生んだ伝説、写真家ソール・ライターのお話でした。それでは、また。
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