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2021-01-18

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展でゴッホについて考える

こんにちはレッサーパンダです。日本中に蔓延するコロナウィルスはその勢いを増すばかりです。皆さん、お元気でしょうか?昨年の今頃は、まさかこんな酷い状況になるとは誰が想像したでしょう。レッサーパンダは昨年の今頃、久しぶりにゴッホの作品に触れ(兵庫県立美術館で開催された「ゴッホ展」)ゴッホの初期作品の稚拙さに、ちょっと驚いたりしていました。レッサーパンダが出かけた直後、コロナウィルスの影響でゴッホ展は中止となりました。1年が経つのって本当に早いですよね。

至宝の名作61点が国内初お目見えの展覧会

これも昨年の11月になるのですが、原田マハさんのゴッホの人生を描いた小説「たゆたえども沈まず」を読みました。改めてゴッホの人生をトレースして「もう一度、ゴッホの作品を見てみたい」という思いが募っていました。そんな想いをいだいて大阪・中之島、国立国際美術館で開催中のロンドン・ナショナル・ギャラリー展(以下、ナショナル・ギャラリー)に出かけました。この展覧会の目玉展示は何といってもゴッホの「ひまわり」が展示されているのです。

会場は大阪・中之島、国立国際美術館。アメリカ人建築家シーザー・ペリの斬新なデザイン。

会場は大阪・中之島、国立国際美術館。アメリカ人建築家シーザー・ペリの斬新なデザイン。

ご存じの方も多いと思いますが、ナショナル・ギャラリーは世界的に有名な英国の美術館です。ヨーロッパの歴史的有名美術館の多くが「王室おかかえ」から発祥したのに対し、ナショナル・ギャラリーは民間の富裕層や文化人が市民のために設立した美術館です。1824年の設立から、いわば「芸術を愛する有志」の想いを延々と引き継ぐ美術館なのです。ナショナル・ギャラリーは「西洋絵画の殿堂」であり、世界中の美術館の規範、お手本となる凄い美術館なのです。

国立国際美術館・地下の展示ホールに続く長いエスカレーター。

国立国際美術館・地下の展示ホールに続く長いエスカレーター。

ナショナル・ギャラリーは作品をなかなか貸し出さない美術館としても有名です。今回の展覧会では61点の作品がお目見えしましたが、全て国内初公開です。レッサーパンダの今回のお目当ては当然ゴッホの「ひまわり」です。しかし、ゴッホ以外にもレンブラント、フェルメール、カナレット、モネ、セザンヌ、ゴーギャン、ドガと綺羅星のような作品群が展示されています。まるで、西洋絵画の教科書のような美術展になっています。どの作品をとってもブログが一つ書けてしまいそうですね。

自分の自宅を庭園にし、そこで一生絵を描いて暮らしたモネ。理想の人生ですね。

自分の自宅を庭園にし、そこで一生絵を描いて暮らしたモネ。理想の人生ですね。

以前から気になっていたゴッホの「ひまわり」

白状すると実はレッサーパンダはあまりゴッホが好きではありませんでした。狂気で自分を駆り立て作品作りのパワーにした人・・・そんな偏見がありました。作品の良し悪しよりもその生きざまに共感できないところがあったからです。それが、昨年の春、久しぶりに国内で開かれたゴッホ展を見て少し考え方が変わりました。考え方が変わったというより、ゴッホという人物に興味を覚えたというのが正しい表現かも知れません。

以前のブログでも書きましたように、初期のゴッホは画家としてとても未熟でした。これが世紀を越えて人々から称えられた画家の作品??と素直に驚きました。 (時々、初期のゴッホ作品をえらく褒める評論家がいらっしゃいますが、レッサーパンダは正直、賛同できません。)

しかし、南仏アルルに移り住み「ひまわり」を描き始めてから彼は(彼の作品は)変わります。ゴッホは37年間の短い生涯の中で7作品の「ひまわり」を描いています。彼の死後、その全てが世界中で高い評価を受けますが『いったいゴッホに何が起こったのか!?』不思議に思えます。ナショナル・ギャラリーの「ひまわり」から何か感じ取れるのではないか・・・期待とともにゴッホの作品と向き合いました。

近くで見ると花のマチエールが立体的ですごい「ひまわり」

近くで見ると花のマチエールが立体的ですごい「ひまわり」

天才という言葉で片付けられない人間臭さ

ゴッホが存命中に売れた「ひまわり」の絵はたった1点だったそうです。彼の作品に時代が付いてこれなかったのです。但し、物の本によると、その頃の彼は既に大成の片鱗を周辺の人々に知らしめており、歴史に残る作品を世に送り出す準備が整っていたようです。確かに実の弟であるテオドルス・ファン・ゴッホ(通称テオ/画商で彼を生涯支え続けた人物)の命がけの献身が後に彼を世に送り出したという事実はあります。

しかし「ひまわり」の実物を目の前にすると作品の持つエネルギーに惹きつけられ、只ならぬゴッホの気迫に圧倒されます。画商の努力で売れたというレベルでないことは一目瞭然です。補色を使わず黄色だけで表現する世界は天才の先にある狂気をも予感させます。これは間違いないと思うのですがゴッホは本来、才能に溢れインスピレーション豊富な画家ではありませんでした。また、ある時期までは狂気にも取りつかれていませんでした。どうやら、この「ひまわり」というテーマが画家としての彼を再構築させるトリガーになったように思います。

天賦の才を称える際、よく『神が降りてくる』といった表現をします。ゴッホを見ていると画家に神が降りる時、人は高い代償を払うことになるのだとおもい知らされます。繰り返しますが、ゴッホは生まれながら才能に恵まれた人ではありませんでした。職業を度々替え、人の作品を盗み見ながら、泥まみれになり制作に励んでいました。泣き叫びながら世間に認められる日を夢想する崖っぷちの人生でした。そんな、とびきり「人間臭い」彼が当時の絵画世界にパラダイムシフトを巻き起こし、神を自身に招きいれた混沌の過程がこの「ひまわり」から滲み出てくるようです。きっと「神は代償なしには降りてこない」のでしょう。ゴッホの作品を間近に鑑賞し、その人生に思いをはせながら、そんなことを考えてしまいました。

本当はこのフィルメールのような繊細で緻密な絵が好みなのです。

本当はこのフィルメールのような繊細で緻密な絵が好みなのです。

コロナ禍の影響で絵を描く人が急増!絵を描くことの意義ってなんだろう・・・

絵画教室の先生に聞かされたのですが、昨年は絵画コンクールへの応募が驚くほど多かったようです。きっとコロナウィルスの影響で「お家時間」が増えた人が、せっせと作品作りにいそしんだ結果だと思います。本当に沢山の人々がキャンバスやスケッチブックに向かっていたわけです。

人は(自分は)なぜ絵を描くのだろう??誰かに自分を認めてほしいから?作品の腕前を自慢したいから??うまくすれば自分の作品に高値がつくから???絵を描いていると嫌なことを忘れるから??

何だかどれも当たっているような気がします。しかし、単なる我欲でない何かがやって来る時がいつかあるのではないか?まるで天啓のような何かが。まるでゴッホが「ひまわり」に出逢ったように特別な何かにいつか巡り合えるのではないか・・・みんなそんな瞬間を夢見て絵を描き続けるのではないかな・・・レッサーパンダはそう思います。ゴッホにはなれなくても絵を描き続けていれば、いつかゴッホが感じた高揚感や幸福感に触れる日が来るのではないかと期待してしまうのです。ゴッホの作品に触れ考えをめぐらすとき、いつも答えのない問答が頭の中でグルグルと巡ってしまうレッサーパンダです。だからゴッホが嫌いなんです(笑)。それでも展覧会に行ってしまう・・・不思議なものです。

予約制の良いところは混雑を避け、ゆっくり絵と向き合えるところ

予約制の良いところは混雑を避け、ゆっくり絵と向き合えるところ

今日は年末に出かけたロンドン・ナショナル・ギャラリー展でゴッホの「ひまわり」を見た時のお話でした。それでは、またね。

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展について

開催は2021年1月31日(日)までです。コロナウィルス感染対策のため予約制となっていますのでご注意を。混雑が無くて良いですよ。

公式サイトはこちら

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