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2017-10-05

「みすや」は東海道五十三次の時代から愛され続ける『針』の専門店です。

レッサーパンダです。前回の「ギャラリーみすや」の紹介で『名前に歴史がある』という風に書きましたが、今回はそのお話です。

表はにぎやかな店舗です。その横の路地を奥に入ると・・・

「みすや」は、お針屋さんの屋号なのです。

「ギャラリーみすや」があるビルの1階、ファンシーグッズ店の横に奥へと続く小さな入口があります。京都特有の路地を奥に入るとそこは別世界。

奥まった路地。こんなところにお店なんてあるの?

小さな中庭が忽然とあらわれ、その奥にまるで庵の様な店舗が・・・。表のファンシーグッズ店が派手なだけに、この突然の落差に驚かされます。

突然のこの風景、初めての人は100%戸惑います。

実はこのお店で商われているのは裁縫の「針」です。

お客と店主の距離が近い京都ならではのお店です。

風情はまるで使い込まれた茶室の様。慎ましやかなお店です。店内にはガラスの陳列台といくつかの棚だけ、極めてシンプル。陳列台の奥にいつもご主人が一人でお店番です。

玄関、みすや針の屋号が見えてちょっと一安心。

お客と店主の距離が本当に近い、対面商売の御手本のような商いです。この距離の商売はお客に嘘が付けません。商品の良し悪しだけでなく、売り手の人柄や誠実さが直に伝わってきます。今では珍しい京都ならではのご商売です。

慎ましやか店内。でもこれで十分なのです。

お店は小さいですが、扱う商品は小さな物ですから広さに不自由はありません。和裁・洋裁様々な針が、なんと常時150種類以上備えがあるとのことです。

「みすや針」の歴史と名前の由来です。

「みすや針」が現在の場所に店を構えたのは江戸時代の初め頃、京都三条は東海道五十三次の終着点であり全国からの観光客が訪れる一大観光地でした。みすやの針は当時の観光で京都を訪れた庶民の格好のお土産だったそうです。強くてしなやかで丈夫、荷物にならずに持って帰れて、お留守番の人たちに喜ばれる京都土産だったのです。評判が評判をよび、当時のわらべ歌にお店の名前がでるほどになりました。

様々種類の針。針ってこんなにあるんですね。

この地に店を構えた当初、まだ屋号は『池ノ端針』だったそうです。『みすや針』の屋号は1651年に宮中の御用針司に任じられる時から始まります。御用針司は宮中で針を作るのですが、当時の司は「清め」の意味と、その技が秘術であったことから、御簾(みす)の中で作業しておられたのです。それをご覧になった当時の天皇から「御簾の内で仕事をする針司」ということで「みすや」の名前を賜り、今の屋号が付いたとのことです。(三條本家みすや針・ホームページより)

明治時代に発行された京案内の木版本には、遠くから針を買いにきた旅人にお茶を振る舞う店先の様子が描かれているそうです。実はその時の釜、今もひっそり残っています。(参考:婦人画報)

見ているだけで楽しくなる「針」は一流の工芸品です。

レッサーパンダは着物を縫うとか、衣服を仕立てたりすることとは縁がありませんが、このお店に陳列されている針は使わなくても欲しくなる可愛らしいものばかりです。こちらの針は機械の大量生産ではありません。いまだに職人さんが一本一本手作りをしているものが大半です。

作業や糸の種類、作り手の好みなど、それぞれに適した針があります。

穴の大きさ、針先の強さや胴のしなりの良さなど一本の針に職人さんのこだわりが詰まっています。現在、このお店のご主人は十八代目だそうです。先日、拝見したギャラリーのオーナーさんもこの方です。気さくで親切なご主人とお話をしていると私たちが知らない歴史の1ページをお話してくださるかも知れませんよ。京都に来られて、グルメや有名寺社仏閣に飽きたら、ぜひ足を運んでみてください。

人形がかしらに付いた楽しいマチバリと手毬の様な針山。

今日は江戸時代から続く「三條本家みすや針」さんのお話でした。それではまたね。

三條本家 みすや針

住所:〒604-8036京都市中京区三条通河原町西入る石橋町26

営業時間:10:00~18:00

問合せ:TEL:075-211-2825

定休日:木曜日

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