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2020-02-10

映画 JOKER(ジョーカー)がすごい!!悪のカリスマはどのように生まれたのか?

こんにちは、レッサーパンダです。映画が好きで映画館へもよく足を運びます。嬉しいことは上映を見逃した作品も最近はすぐにネット配信されたりBlu-rayとして販売されたりすることです。そんなわけで昨年末に見逃したホアキン・フェニックス主演の「JOKERジョーカー」Blu-rayの発売日を待って購入しました。

Blu-rayの初回発売盤には特典として4枚のポストカードが付いてきます。どれも素敵です。

Blu-rayの初回発売盤には特典として4枚のポストカードが付いてきます。どれも素敵です。

アカデミー賞に一番近い映画作品「JOKERジョーカー」

期せずして第92回アカデミー賞の発表は2月10日です。この作品「JOKERジョーカー」は現在、「アカデミー賞に一番近い作品」と言われています。アメリカの503件の評論(有名評論家が投稿)のうち69%にあたる347件が高く評価しているとのことです。

既に英国アカデミー賞では主演男優賞、キャスティング賞、作曲賞を受賞しており、ヴェネツィア国際映画祭では金獅子賞を受賞しています。興行収入も10億ドルを超え世界記録を達成しているそうです。これほど注目されるこの作品の魅力とは何なのか少し考えてみました。

ジョーカー役ホアキン・フェニックスは 1974年生まれの46歳。

ジョーカー役ホアキン・フェニックスは 1974年生まれの46歳。

これまでの「バットマン」シリーズとは全く違う独自の視点

ご存じの方も多いと思いますが、この映画の主人公はDCコミックス『バットマン』に登場する最強の悪役(スーパーヴィラン)ジョーカーです(DCコミックはマーベル・コミックと並ぶ二大アメコミ出版社のひとつ)。ジョーカーは1966年制作の旧テレビシリーズ映画版『バットマン(英語版)』以来、多くの映画作品に登場するバットマンの仇敵です。バットマンの映画シリーズはアクション映画、SF映画として、その超人ぶりや斬新な秘密兵器で悪者をコテンパンにやっつける爽快さが人気の秘密でした。バットマンシリーズに登場するジョーカーは不気味で残虐な怪人、人間離れした悪のカリスマとしてこれまで描かれてきました。しかし、どの作品もジョーカーの出自やパーソナリティーが理解できるような描写はなく(少なく)、その容姿さながら「バットマンにぶちのめされるピエロ」の姿しか印象に残りませんでした。

本作では、そんなジョーカーのパーソナリティーを深く掘り下げ『どのように悪のカリスマが誕生したのか』ということを丁寧に描写しています。

独特の化粧は街頭で皆を笑わせる為のもの。後のキーワード。

独特の化粧は街頭で皆を笑わせる為のもの。後のキーワード。

監督のトッド・フィリップスは本作について「(本作は)コミック映画というより人物研究という感覚だった」、「ジョーカーの映画というより、面白い人物研究の映画を作りたかった」と語っています。まさに、その通りでSF(サイエンス・フィクション)活劇の要素は全くなくて、人間・ジョーカーを丁寧に描いたHD(human drama)なのです。本作の魅力の第一はまさに監督による、人間・ジョーカーを視る観察眼にあります。

世紀のスーパーヴィランはどのようにして生まれたのか

主人公アーサー・フレック(後のジョーカー)は母親と二人してゴッサムシティで細々と暮らすコメディアンでした。精神障害はあるものの、生真面目で誠実、子供好きな若者は道化師の仕事で日々の糧を稼いでいました。彼が真面目で真摯であればあるほど、荒んだ街やそこで暮らす心無い人々、不条理な社会は彼を裏切り続けます。ある日、職を奪われ、失望の中、道化の姿のまま地下鉄に乗ったアーサーは、女性に絡んでいたウェイン産業の証券マンたちにつかまり、ひどい暴行を受けます。アーサーは反射的に彼らを拳銃で射殺してしまいます。

生まれて初めて銃を持ち、心ならずも人を殺したアーサーは言い知れぬ高揚感にとらわれ、逃げ込んだ公衆トイレの中で見事なダンスを踊ります。これが、まさに惡の華「ジョーカー」誕生の瞬間でした。それ以降のアーサーは、その抑圧から自身を開放し、心の渇望のままに行動する怪人に変わっていきます。

人間が落ちていく「瞬間」が垣間見えた

徐々に変わっていくアーサー。これまでは、社会のルールやしがらみに辛うじてしがみついていた脆弱なパーソナリティーが得体の知れない何かに変貌していくのです。「以前どこかでこの様なシーンをみたことがあるな」と考え込み、思い当たりました。スターウォーズ・シリーズのアナキン・スカイウォーカーが愛する女性を守るためにジェダイからシスに身を落とす瞬間の金色の瞳。まさに目の色が変わる、あの瞬間に似ています。アーサーは子供のころからの持病(後に母親の虐待の結果だとわかる)で、極度の緊張や心の抑制が利かなくなると「大声で笑う」というパニックを起こします。ストーリー初期の笑いは「笑いたくない自分を何とかしたい」ということが伝わってきますが、殺人を犯したあとのアーサーは、悪行を(悪事をはたらく自分を)心から笑っているように見えます。まさに、ジョーカーのパーソナリティーの変貌です。

映画の中に登場するこの長い階段はセットではなくニューヨークに実際に存在します。今では観光客が訪れる街の名所になっているそうです。

映画の中に登場するこの長い階段はセットではなくニューヨークに実際に存在します。今では観光客が訪れる街の名所になっているそうです。

怪優 ホアキン・フェニックスの迫力!!

この複雑な人間ドラマにリアリティをもたらしているのは、ひとえに主演俳優ホアキン・フェニックスの名演によります。真面目で陰気な青年アーサーが徐々にみんなが知っているジョーカーに変貌していく様子を怪演しています。登場初期の貧しいアーサーの服装は若者というより老人のようです。その衣装さながらの心理描写を形にしていきます。最後に自分をジョーカーとして開放するシーンの衣装は70年代風のエンジ色の丈の長いスーツ。その衣装を身に着けセクシーなダンスを踊るシーンは若さにあふれ生き生きとしています。この素晴らしい演じ分けは、芝居をしているというより、役者ホアキン・フェニックスがどっぷりとその世界観に入り込みジョーカーになりなりきっているからでしょう。

実はホアキン・フェニックスという役者、かなり変わった人物のようです。「僕が一緒に仕事をする時、監督に求めるのはビジョンと独自の解釈だ!」と言い切っています。(裏を返せば、自分に小手先の演技指導は不要と言っているのですね。)それを受けて、監督のトッド・フィリップスはこう言っています。「リハーサルは1度もなし、演技の話もしなかった。物語と人物の話をしただけ。演技の指示は一切せず(ホアキン・フェニックスの)自然の成り行きに任せた。それが本作の特色で納得のいく方法だった。」と語っています。

また、トッド・フィリップスはホアキンについて、その性格が垣間見える面白いエピソードも語っています。「ホアキンは人が何をしようと自分の思い通りに行動する。まさに僕らのジョーカーに必要な要素だと感じた。」「(役作りのために)80kgの体重を60kg以下に落とす必要があった。6月に入っても減量を始めていない、9月に撮り始めるというのに。専門家や栄養士をやとうというこちらの申し入れを拒否した。断食をするという。彼は1日、リンゴ1個でひと夏過ごしたよ(笑)。」台本の読み合わせの時には20kg以上体重を落として、すっかり役に入り込んでいたようです。Blu-rayの特典映像には体重が元にもどった別人のようなホアキンが出演しています。

これまでジョーカーの役どころは多くの名優が演じ成功を収めています。そのプレッシャーを跳ねのけたのはホアキン・フェニックスのストイックさとある種の傲慢さにあったのではないかと思わせるエピソードです。

誰の日常にも存在する「善」と「悪」の境目

このジョーカーの物語、全くの絵空事とは思えない節が随所に見受けられます。映画の時代背景は1981年のゴッサムシティ(実はニューヨークの写し絵)。荒廃と人心の乱れの中で暴動が起こり、悪事が台頭する世界。そんな世の中で「正しく生きる」とはどういうことか?という疑問をこの映画は見る人に投げかけてきます。また、「ジョーカーの過ちをあなたも引き起こしている(引き起こしかねない)のでは?」と問いかけているような気もします。まさに「悪」為すことの官能、「守るべきもの」を放棄した解放感と高揚は甘美な毒酒のようです。ラストシーンでアーサー(ジョーカー)がフランクシナトラの「That’s life(それが人生!)」という歌を口ずさみますが、まるでジョーカーが傍観者である(映画を見ている)私たちに「これは俺の人生!」、「君の人生はどうだい??」と笑いながら語りかけているようです。

心ゆすぶられるホアキン・フェニックスの独特のダンス。秀逸。

心ゆすぶられるホアキン・フェニックスの独特のダンス。秀逸。

シリーズ化が楽しみな トッド・フィリップス監督作品

監督のドット・フィリップスという人は本当に才能のある人です。映画に使われている音楽も彼がヒドゥル・グドナドッティル(美人チェロ演奏者)に依頼しています。素晴らしいチェロの演奏が荒廃したゴッサムシティの陰惨でリアルなイメージを盛り上げています。トイレでアーサーが銃を捨てるシーンで役者と監督の意見が対立し撮影が行き詰った時、ダンスのイメージを主張するアーサー役のホアキンに監督のドットは「君に聞かせたい曲がある、昨日届いたすばらしい音楽だよ」とこの映画の主題曲を聞かせます。すると美しいチェロの旋律にホアキンは踊りだし素晴らしいダンスを披露したそうです。そのダンスシーンがそのままOKテイクになったそうです。そんなアメージングなエピソードもトッド・フィリップス監督の人並外れた人間力の賜物だと思います。

この映画「JOKERジョーカー」はトッド・フィリップス監督にとっては『シリーズの第一弾』とのことです。次回作は「ジョーカーのその後」が語られるのか、それとも「全く別の人物」にフォーカスがあたり、新たな視点で物語が始まるのか・・・今から次回作が本当に楽しみです。アカデミー賞もたくさん受賞することを心から祈っています。

今日は、大ヒットした映画「JOKERジョーカー」のお話でした。ご興味あれば、ぜひどうぞ。それでは、また。

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