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2017-11-17

在りし日の姿を今に伝える「本丸御殿」の美術的価値

名古屋話の続きです。名古屋城の真横にすごいものが出来つつあります。それは名古屋城『本丸御殿』です。先に名古屋城は「お城の面白ミュージアム」だと伝えましたが、こちらは伝統的な匠の技と美術工芸の粋を結集した「城郭御殿」最高傑作の再現です。

まだ工事途中の本丸御殿。後ろに工事のための鉄骨の枠組みが見えます。

まだ工事途中の本丸御殿。後ろに工事のための鉄骨の枠組みが見えます。

かつて京都二条城と双璧をなした武家風書院造の至宝

名古屋城の本丸御殿は京都二条城の二の丸御殿と並び、武家風書院造の双璧と言われていました。1930年に城郭建築として国宝第一号に指定されています。(出典:名古屋市観光文化交流局パンフレット)残念ながら1945年の空襲により、この本丸御殿も名古屋城ともども焼失してしまいました。名古屋城は1959年に再建されましたが、本丸御殿は再建が進まず、2009年にやっと復元工事に着手することとなりました。現在、第1期工事(玄関・表書院)2013年完成、第2期工事(対面所・台所・御膳所)が完成し見学することができます。2018年の完成に向けて上洛殿などの修復工事がすすめられています。

狩野派の絵師による迫力の襖絵。ここは来訪者が最初に通される玄関です。

狩野派の絵師による迫力の襖絵。ここは来訪者が最初に通される玄関です。

復元を支えたのは史料保存の涙ぐましい努力

一度は空襲により焼失した本丸御殿ですが、実は襖絵や杉戸など貴重な財産は疎開していました。そのため貴重な財産は戦火を免れ今も国の重要文化財として守られています。また、建築に関しては昭和初期に調査・計測が既に完了しており109枚の実測図が完成しておりました。また、合わせて網羅的に撮影された写真や2,000個を超す礎石の保護などがなされており戦火をまぬがれています。

私的な対面や宴席などに用いられた対面所。襖絵は京都や和歌山の風俗画です。

私的な対面や宴席などに用いられた対面所。襖絵は京都や和歌山の風俗画です。

400年以上前に出来た本丸御殿を継承するために「いつか必要になる」と信じて作業を行い続けた、名古屋の人々の先見の明に驚かされます。この地道な作業が無ければ、今回の復元プロジェクトは成立していなかたことでしょう。

子供にも感じ取れる狩野派画家の凄みとその実力

今回、二人の子供を連れて見学に入りました。通常、国宝や重要文化財の展示となると小学生以下お断りも多いのですが、この本丸御殿は無料で(大人は名古屋城の入館料500円)だけですべて見学することもできます。かつて狩野派の絵師たちが全身全霊を注いで描いた障壁画を現代の最新技術で復元模写されています。その迫力に小学生の子供でさえも「豹が獲物を捕まえているところがすごい!」、「キジの夫婦が仲よさそう」、「大きな松の緑がきれい」と感銘を受けているようでした。

子供たちも好奇心をそそられ、勝手に先に進んで新しい絵をみつけては歓声をあげていました。

子供たちも好奇心をそそられ、勝手に先に進んで新しい絵をみつけては歓声をあげていました。

「ものづくりの技、心、自然環境の大切さ」を後世につたえる一大文化プロジェクト

このプロジェクトの総工費は120億円を超える金額になるようです(内40億円はトヨタが負担)。合わせて最近のニュースで名古屋城の総木造化建替え工事も決まりそうです。こちらは上物だけで500億円以上です。なぜ、そこまでお金をかけて名古屋城やその付帯施設に執心するのでしょうか?レッサーパンダが思うに「名古屋城は名古屋市民にとって聖地」なのだと思います。名古屋市が掲げるこのプロジェクト実施の意義の第一番目に『市民の新たな誇りの創出』が上がっています。

右が名古屋城、左が本丸御殿。どちらも完成が本当に楽しみです。完成したらまた訪れたい!

右が名古屋城、左が本丸御殿。どちらも完成が本当に楽しみです。完成したらまた訪れたい!

名古屋市民にとって名古屋城はその誇りのあらわれなのでしょう。現にレッサーパンダが最近乗ったタクシーの運転手さんはみんな名古屋市長を褒めちぎっています。「あの男はあんなごつい顔しているくせに、真面目で、やることはきっちりとやる!そのギャップが良いのよ!」という評判でした。河村たかし、やる男ですね。何としても市民のプライドを具現化して後世に残してほしいものです。 今日は、2018年に完成予定の名古屋城「本丸御殿」のお話でした。それでは、またね。

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