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2018-08-08

初来日!若き日のモネの傑作が楽しめる|プーシキン美術館展

今年の4月に京都文化博物館で「ターナー風景の詩(うた)」という展覧会を見たのですが、それ以来すっかりナイトミュージアムの楽しさを知ってしまいました。5月に「オットー・ネーベル展」でのナイトミュージアムを体験し(この展覧会はナカムラクニオ氏の解説が素晴らしかった)、すっかり味をしめてしまいました。以来、ナイトミュージアムを開催している展覧会を探しいていたところ、大阪・中之島の国立国際美術館で開催されている「プーシキン美術館展―旅するフランス風景画」という展覧会でナイトミュージアムが開催されていることを知り、出かけてきました。

シーザー・ペリ設計の国立国際美術館。いつ見ても「ちょっとやり過ぎ感」がすごい。

シーザー・ペリ設計の国立国際美術館。いつ見ても「ちょっとやり過ぎ感」がすごい。

ヨーロッパ最大の美術館のすごさに触れる

今回の展覧会のテーマとなっているロシア「プーシキン美術館」は世界でも群を抜いて有名な美術館のひとつなので、あらためて解説は不要かと思います。

かなり空間にゆとりのある美術館のホワイエ。金曜の夜だが来館者はきわめて少ない。

かなり空間にゆとりのある美術館のホワイエ。金曜の夜だが来館者はきわめて少ない。

建物規模ではヨーロッパで最大、その収蔵作品数は10万点以上、エルミタージュ美術館に次ぐ世界第2位の巨大美術館です。今回の日本での展覧会は、天文学的作品群の中から厳選された風景画65点がやって来ました。作品点数はそれほど多くないのですが、モネ、ルソー、ロラン、ブーシェ、コロー、ルノワール、セザンヌなどなどキラ星のような作家たちの作品が何事も無いように集められているのです。野球で例えるならばアメリカの大リーグ・オールスター戦がいきなり広島のマツダスタジアムで始まったような感じです。(あくまで個人の感想です・笑)

ホワイエに設置された大きな見附には、話題の「モネ」作品がデザインされている。

ホワイエに設置された大きな見附には、話題の「モネ」作品がデザインされている。

何と写真撮影がOKSNS拡散をすすめる珍しい展覧会

ヨーロッパやアメリカの美術館に行くとフラッシュさえ使わなければ写真撮影OKというケースがよくあります。中には(ルーブルの様に)美術館内で学生が模写している風景を見かけたこともあります。それに引きかえ日本の美術館や博物館の多くは写真撮影が許可されていないというのが実情です。

昼間には考えられないゆとりのある展示会場。自分のペースで名画を鑑賞できる。

昼間には考えられないゆとりのある展示会場。自分のペースで名画を鑑賞できる。

そんな中、今回のプーシキン美術館展では一部を除く約9割の作品は写真撮影OKなのです。それどころか、パンフレットには『ぜひ、撮った写真をSNSにアップして、展覧会の感動を共有してください』とまで書いてあります。実はこの写真撮影許可はナイトミュージアムの特典で、鑑賞者の多い午前10~午後5時は撮影禁止なのです。こんなところも、ナイトミュージアムの魅力ですね。

日本初公開!若かりしモネの瑞々しい作品に感激

今回の展覧会の注目作品はクロード・モネが26歳の時に描いた「草上の昼食」という風景画です。天才・モネは24歳でサロン・ド・パリ(サロン)に初入選します。

話題の「草上の昼食」。名画と1対1で向合えるのはナイトミュージアムならでは。

話題の「草上の昼食」。名画と1対1で向合えるのはナイトミュージアムならでは。

「草上の昼食」にはルノアールをはじめとした若かりしころの巨匠たちが描かれている。

「草上の昼食」にはルノアールをはじめとした若かりしころの巨匠たちが描かれている。

「草上の昼食」はモネのサロン出展のために満を持して手掛けた大作なのですが、結果、サロンには出展されなかった未完の傑作なのです。今回、展示されている作品は後日、モネが改めて描き直した作品です。本物の「草上の昼食」は高さ4m、横幅6mの大作でしたが、その一部が切取られてオルセー美術館に保存されているそうです。

モネの作品は画家の成長の過程を示すように展示されており、とても興味深い。

モネの作品は画家の成長の過程を示すように展示されており、とても興味深い。

作品の印象は明るく、楽しげで、ルノワールの風景画によく似ています。実際にルノワールと友人関係にあったようなので影響を受けたのかも知れませんね。現存の「草上の昼食」は8年以上後に描きなおされた作品なのですが、モネの「青春の一コマ」を切取ったような瑞々しさを感じさせます。この作品以外にモネの作品は3点展示されています。

一番好きな「陽だまりのライラック」。まるで少女が満開の花の下で隠れん坊しているよう。

一番好きな「陽だまりのライラック」。まるで少女が満開の花の下で隠れん坊しているよう。

「陽だまりのライラック」、「白い睡蓮」、「ジヴェルニーの積みわら」と時間軸に沿って展示されています。

モネの代名詞「睡蓮」。実際に住んでいた家の庭をそのまま作品にしている秀作。

モネの代名詞「睡蓮」。実際に住んでいた家の庭をそのまま作品にしている秀作。

ライラックは印象派への工程、睡蓮は印象派の完成となり、積みわらは印象派の成熟。モネの成長の様子を作品から見てとれる仕掛けとなっています。何だか、この様なさりげない展示手法にも有名美術館の実力(底力)を感じてしまいました。

印象派として完成の領域に入った「ジヴェルニーの積みわら」。豊かな色彩に感銘を受ける。

印象派として完成の領域に入った「ジヴェルニーの積みわら」。豊かな色彩に感銘を受ける。

美しい風景を巡る「旅」を楽しめる美術展

展示を見ていると多くの巨匠たちが、その時代に感じた「風」や「光」や「匂い」までも伝えようとしているようです。今回のタイトルである「旅するフランス風景画」という表現が本当にしっくりと伝わります。まるで、巨匠たちと一緒にフランスや南国を旅して歩いているようです。

ルソーは1度もジャングルを見たことが無かった。想像で描いた傑作「馬を襲うジャガー」

ルソーは1度もジャングルを見たことが無かった。想像で描いた傑作「馬を襲うジャガー」

そんなことを考えながらゆったりと名画を鑑賞できることが、ナイトミュージアムの一番の魅力ではないでしょうか。ちなみに、友人からの「くちコミ」ですが、俳優の水谷豊さんの音声ガイドも秀逸だとのことです。

今日は国立国際美術館で開催中の「プーシキン美術館展―旅するフランス風景画」のお話でした。それでは、また。

プーシキン美術館展―旅するフランス風景画

場所:国立国際美術館

〒530-0005大阪市北区中之島4-2-55

電話:06-6447-4680

会期:2018年7月21日(土)~10月14日(日)

開館時間:午前10時~午後5時

※金曜、土曜日は午後5時以降、9時まで開館(ナイトミュージアム)撮影可能です。

料金:一般1,500円、大学生1,200円、高校生600円、中学生以下は無料。

交通:京阪電車中之島線「渡辺橋駅」徒歩5分。

 

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